創刊500号記念座談会 新たな時代の幕開けとともに、世界の理科大へ

新たな元号「令和」となった5月、『理窓』は原点である『東京物理学校同窓会雑誌』の明治22年発行から130年、
昭和2年発行の『会報』から通巻500号を迎えました。

これを記念して「創刊500号記念座談会」を開催。増渕理窓会会長司会のもと、本山理事長、松本学長に
東京理科大学の現況や今後の展望についてお聞きしました。


増渕忠行 理窓会会長

増渕理窓会長 本山理事長、松本学長、本日は大変お忙しい中、お時間を割いていただきましてありがとうございます。年3回発行の『理窓』が、この度通巻500号を迎えました。これを記念し、『理窓』近藤編集長の発案により座談会を企画いたしましたので、よろしくお願いいたします。
早速ですが理事長、東京理科大学の卒業生として「母校に対する思い」をお聞かせください。

本山理事長 本学は1881年の創立以来、“理学の普及を以て国運発展の基礎とする”という建学の精神を守り、大学運営を連綿と続けてきました。そのぶれない姿勢を誇りに思っています。それは本学のCore competenceであり、イノベーション力、教育力、研究力など、すべてが建学の精神に繋がっていると思います。

増渕 建学の精神を守り、何事においても「ぶれない姿勢」は大切ですね。

本山 本学は、1949年の学制改革によって東京物理学校から東京理科大学になりましたが、理学部一部、二部からスタートし、その後最初の学部新設が1960年の薬学部でした。当時の私立大学の薬学部は、薬専(旧制薬学専門学校)から大学に昇格した大学が中心で、薬専の流れでない大学が“理学研究の世界から薬学の世界を極める学部を設置した”というのは本学以外になく、まさに建学の精神である“理学の普及を以て…”の具現化でした。
その後も諸先輩が建学の精神を守り、実践してきた証として今日の大学発展に繋がっていると考えています。

増渕 旧制薬学専門学校の歴史を乗り越え、新たなチャレンジをされた当時の大学経営の皆さんの決断は素晴らしかったですね。
では、松本学長にお伺いします。学長は東京大学や国の研究機関で要職を経験され、昨年4月に本学の学長に就任なさいました。学長就任前、本学をどのように見ておられましたか。また、就任なさって1年経ちましたが印象をお聞かせください。

大学としてのポテンシャルを伸ばすために

松本洋一郎 東京理科大学 学長

松本学長 東京理科大学は、教員も学生も外部から高い評価を受けております。学長に就任し本学の歴史を学びましたが「非常に興味深い歴史を持つ大学であること、そして学生・教員とも大変優秀であること、極めてポテンシャルの高い大学」だと認識しました。この高いポテンシャルをさらに伸ばすにはどうすれば良いかをこの1年考えてきました。

増渕 具体的にはどんなことを考えておられるのでしょうか。

松本 外部組織との連携が必要です。「東京理科大学ならでは」を大切にしつつも、学内だけに閉じているのではなく、外部組織と連携を図って行く。それこそが理科大に必要なことだと考えています。これまでも、やってきていますが更に強化することが大切です。

増渕 確かに外部組織と連携し、時代の流れに乗り遅れず「先頭集団」を走り続けたいですね。理窓会も過去のことに執着せず、外部からの刺激を積極的に取り入れて、「周回遅れ」にならないようしっかり走りたいと常々考えています。
次に理事長、東京理科大学の現状について、少しお話しください。

本山 大学通信発表の大学ランキングで、本学は教育力と研究力で私立大学1位となりました。また今年度の一般入試では上位校の苦戦が伝えられる中、2年連続で過去最高の志願者数を更新し、6万人もの志願者を集めることができました。理工系総合大学として、国内屈指の大学という評価をいただいています。私も卒業生の一人として、ここまで築き上げられた大学に係るすべての諸先輩方のご尽力の賜物と感謝申しあげます。
しかし、国内では18歳人口の減少、世界に目を向ければ国境を越えた大学同士の競争も激化しています。本学が更に発展していくためには、教職員等、大学の構成員一同が「現状のままではいけない」という危機感を共有することが必要です。
まず、課題の一つが国際性です。留学生の受け入れと輩出を増加させるとともに、これまで以上に海外の研究者と連携して研究を行っていく必要があります。
2つ目は、財務基盤の安定です。理工系大学のため、収入に占める学生からの授業料収入の比率がまだまだ高いので、これを改善しなければなりません。収益をあげる仕組みを構築し、収入の多角化を目指しています。これらの収益は教育力・研究力の増強、研究成果の社会への還元などに繋げて有効に活用していきたいと考えています。

増渕 授業料収入の「比率を下げる」、大変な課題ですね。ぜひ実現し、その上で教育力・研究力向上のために配分する、すばらしいお考えですね。

本山 一連の財務改革の成果は既に出始めており、教育研究環境の向上のための基金等として、使途を明確に活用できる体制が整いました。昨年度には、本学初となる給付型奨学金制度も創設しています。収入を増やす努力は、理事会のみでなく学長室においても外部資金の獲得という形で実施され、研究力の更なる向上を目指しています。
今まで述べたことは一例ですが、“世界の理科大”実現に向けて、本学の弱みを克服し、強みを伸長させる方策を進めていきます。本学にはまだまだポテンシャルがあると考えます。

創立150周年…その時、東京理科大学の姿は?!

増渕 本山理事長は理事長に就任され、まず健全な財政基盤確立から取り組まれました。更に創立150年を見据え「VISION 150」を策定なさいました。これまでも『理窓』紙面等で触れてきましたが、改めて、12年後に迎える150周年の姿についてお話しください。

本山 本学は2031年に創立150周年を迎えます。先人たちから受け継いだ、この「東京理科大学」という大きな財産を大切に守り、そして更に発展させていくためには、構成員である教職員が一丸となって大学改革に取り組む必要があります。
そこで一昨年、理事会は「学校法人東京理科大学長期ビジョン-TUS VISION 150-」を策定しました。150周年を迎える2031年、本学が“世界の理科大”として、国内外を問わず優れた科学者、研究者が集い、同じ思いを持って集った学生が多方面で活躍する、それによってまた本学で鍛えられたいと思う学生が連綿と続いて入学する…そんな状況でありたいと願っています。VISION150ではそれを実現するための方策を示しました。
しかし、「絵に描いた餅」では意味がありません。そこで昨年は、このVISION150を3か年の中期計画に落とし込み、150周年への道筋を具体化させています。

増渕 絵に描いた餅にしない。大切なことですね。そのためにどのように取り組みをなさっているのですか。

本山 和夫 学校法人東京理科大学 理事長

本山 今年は初めての試みとして、本学の財務情報を中心に大学の今後の方向性をまとめたリポートを作成し、「東京理科大学運営協議会」で説明しました。出席者からは「これまで法人からしっかりと財務の説明を受けたことがなかったので現状を初めて認識できた」という意見もいただき、大学の各セクションの責任者にしっかり問題意識と今後の方向性を共有していただけたと思っております。
今後も理事会としては、本学の最大の財産である教育力、研究力で最大のパフォーマンスを発揮できるよう、責任を持って法人運営を行っていきます。VISION150に沿った大学改革が実現できれば、2031年の東京理科大学はきっと今よりもっと素晴らしい大学になると思います。そうなるための道筋を作ることが私の責任だと考えています。

増渕 財務データや実施報告書をまとめられ、それをもとに自分たちの立ち位置を理解して、一枚岩になることが重要ポイントだと思います。重要情報の共有化は大切ですね。私も今年から「理窓会会長短信」なるものを全国の支部長、支部事務局長さんなどに発信し始めました。
理事長、その具現化のために、学長室に望まれることはどのようなことでしょうか。

本山 理事会としては、教育研究支援を充実していくために財務基盤の更なる強化を図っていきますが、学長室には、コンソーシアムの設立など積極的に外部資金を獲得する方策を推し進めていただきたいと思います。また、グローバル化といった観点から、留学生を教育し支援する体制の整備をお願いしたいと思います。

松本 私も同じようなことを考えております。学長室としては、外部資金の獲得強化に加え、「教育研究費」の重点配分などを積極的に進めることによって、理科大ならではの夢のある研究の支援や若手研究者の育成を行っていきたいと思います。

増渕 私も松本学長と同じく理窓会会長に就任し1年が経過しました。想像していたよりはるかに多くの問題が山積していて、整理し、優先順位を決めて改善改革を進めたいと日々頭を痛めています。何ごとも「ヒト、モノ、カネ」を考えて計画実行することが基本でしょうが、「情報とスピード」も加えて改善・改革に取り組んでいます。
学長も頭の痛いことが多々おありかと思いますが、よろしくお願いいたします。

松本 理窓会は大学と重要な利害関係にあると考えています。
将来展望ですが、大学を取り巻く環境は大きく変化し、如何に社会に貢献できるかが問われています。外部の意見を取り入れ、社会への説明責任を果たしつつ、産学官との真の連携を行うことが重要です。教員、職員、学生、同窓生は車の四輪。同窓生は大学に最も近い「社会」の利害関係者で、直接的な情報交換は大学にとっても最重要課題であると考えています。ご協力をよろしくお願いいたします。
東京理科大学の更なる発展に向けてビジョンを共有し、理工系総合大学として多様化、国際化に対応しつつ、教学の充実を図ることで「大学」を大きく発展させたいと思っています。そして、次世代の科学技術イノベーションや産業の発展に貢献したいと願っています。

増渕 可能な範囲で情報交換も継続的にしたいですね。
ところで理事長は、東京理科大学を卒業後、本学とはどのように係わりをもたれていましたか。

本山 私は1972年に卒業して就職後は、学校との係わりは遠ざかっていましたが、’77年に研究室のメンバーで先生の誕生日パーティーを開催したことをきっかけに、理窓会というより大学の先生との繋がりで研究室にお邪魔したり、時折アドバイスを受けて励まされたり…野田の何人かの先生は具体的な質問をすると学生時代より優しく丁寧に教えていただいたのを覚えています。理科大familyとしての繋がりは卒業してもあると嬉しく思いました。そんなことを体験しながら理窓会に入会しました(会費は卒業後払っていましたが)。’87年、企業人会にも入会しましたが、しばらく理窓会とは距離が空き、ある時、同期のメンバーに誘われ会合に参加しますと、人間的にも立派な尊敬できる先輩が多くいることに気が付きました。大学を良くしようと熱意を持って語る方々、社会人としての見識、理科大生としての仲間意識といいますか温かさを醸し出す方々に接することができ、母校の発展を肌で実感し嬉しくなったことを覚えています。それから理窓会と再度関わりを持つようになりました。
私は大学在学中にお世話になった教員、同級生の仲間、卒業後は理窓会の諸先輩や同窓の仲間に大変感謝していると同時に、その感謝の恩返しとして本学の発展に理事会メンバーとして貢献したいと考えています。

増渕 数々のご経験をふまえ、理事長としてご尽力いただきありがとうございます。理窓会の会員や教職員に対して望むことは何でしょうか。

本学同窓の誇りを伝承し母校の発展へ

本山 理窓会の会員の皆様に対しては、本学発展のために同窓の方々に本学の誇りを伝承していただきたいと思います。
本学で学びたいと思って入学してきた在学生へは、教職員全員で理科大familyとして充分な素養を持つように学問の世界で鍛えたいと考えています。そして卒業後も本学の卒業生として誇りを持って活躍していただきたいと切に願っています。社会で活躍し、東京理科大学の名声を更に高めていただくことが、母校の発展に繋がります。
在学生には、学生時代の経験すべてがその後の人生の道標になるということを伝えたいですね。私自身の大学生活を振り返ってみても、大学での講義や実験がその後のキャリアに大きく影響しました。研究室における先生からの指導は、専門教育だけではなく、実際的であり、全人格的な指導まで含まれていたように思います。私にとって学生時代を通じて培った素養は、社会での課題解決にも非常に有効でした。
そして教職員の皆さんには、大学が何をしてくれるかではなく、大学に対して、更に言えば社会に対して何ができるか、という気持ちを持って日々の職務にあたってもらいたいと考えています。昨今、大学や企業におけるガバナンス改革について、「経営機能の強化」と「意思決定の迅速化を図る」ことを目的に、様々な“制度”が議論・導入されていますが、本来組織にとって必要なのは、“制度”でなく構成するメンバーの“使命感”ではないかと考えています。優れた大学は、運命共同体的意識を持った教職員が集まり、その教職員が学校文化を共有し文化として定着させることで、危機の際にも優れた復元力のある大学になるものです。皆さんの活躍に期待しています。

増渕 取り巻く環境、情報が日々激しく変化しています。理事会、学長室、教授会との歯車が合致し、同じベクトルで更なる発展を目指す、そのために理窓会長として微力を尽くしたいと考えています。東京理科大の卒業生であることを誇りに、胸を張って明るく、希望に満ちた日々を過ごしたいと願っています。

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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