女性科学者に明るい未来を!

科学への目覚め

中学生の時、大学生たちとキャンプをしたことがあった。あとで考えてみたが、このことが自然現象の面白さと出会うきっかけになったのだと思う。高校時代にはロマンティックな音楽の話や物理の面白さを語ってくれる先生がいた。高校3年生の時、アメリカ留学も経験した。科学の面白さに目覚めるタイプと苦手なタイプがいるが、大学では物理学を勉強してみようと、東京理科大学に進学した。

鈴木公先生との出会い

素粒子に強く興味を持つようになったのは、理科大学に入学してから。卒研のため理学部一部の鈴木公先生の門を叩いたところ快く受け入れてくれた。鈴木先生は、いつも気軽に学生たちとのディスカッションに応じてくれた。研究室に入ってみないとわからないことが多いが、勉強と研究の違いも教わった。一人ひとりをよく観察し、学生にあった指導をしてくれ、「型にはまらないほうがいいだろう」と言われた。大学院巡りをしていた時、鈴木先生から「アメリカのテキサス大学に行ってみてはどうだ。良い先生がおるぞ!」と紹介された。高校時代にアメリカに留学した経験もあり、アメリカの雰囲気を少しは分かっていたつもりだったが、「テキサス」と聞いて悩んだ。鈴木先生は「3日間で結論が出せなければ、いつになっても出せないぞ。3日以内に結論を出せ」と言われたので、「お願いします」と即答した。鈴木研究室からはその後何年間か、2年にひとりテキサス大に学生が送り込まれた。
テキサス大学では理科大学の大先輩である宇田川猛先生につくことができた。幸運にも宇田川先生がグラジュエイトアドバイザーになられた直後でもあった。必須授業も多かったが、世界中から集まった仲間と大いに勉強した。
アメリカでは頑張って勉強すれば学費も給与ももらえる。科学者を職業としようと決意したのはこのころである。

南極でニュートリノを観測

南極での観測仲間と
前列右端:石原さん

宇宙における高エネルギーの研究を続け、2004年より国際共同ニュートリノ観測装置アイスキューブ(IceCube)実験に参加することができた。千葉大学などを含む12カ国から約300人の科学者が参加するビッグチームで、南極大陸を覆う氷床1立方キロメートル、深さ1,400~2,400mのところに検出器を埋めた装置で宇宙から飛来する高エネルギー素粒子の検出に挑んだ。試行錯誤の連続で「失敗してもめげずに繰り返した。決して、あきらめなかった」。2012年、予測していた実験データが入手(実証)できた時のあの感動は今でも鮮明に蘇る。綺麗な信号が飛び込んできたとき、最初は「エイプリルフールではないか?」とも思った。「共同研究者250人、実動者100人ほど」の成果だ。10年以上追いかけることができ幸せである。

南極でのこぼればなし

南極で会った人はほとんどが科学者で、いろんな国の人たちとの出会いに日々感動の連続であった。科学には、どの国の人とでも話ができる「共通言語」がある。これでどんどん話ができ、楽しかった。
1月1日に氷上マラソン大会があり、半袖で走る人がいたのには驚かされた。世の中にはすごい人がいるものだ。

猿橋賞受賞の感想

高校生の時から猿橋賞のことを知っていた。とはいえ、まさか自分に?と、受賞の知らせを受けた時は驚いた。これまで受賞された多くの大先輩の仲間入りをさせていただき、大変光栄だった。日本では女性の科学者は本当に少ない。せいぜい10%くらいだろう。ブラジルでは50%、ヨーロッパでは40%くらいはいる。日本でも20%くらいは欲しいものである。その時その時の出会いを大切にしながら、科学に興味を持つ若者が一人でも多く出てくれることを願っている。

後輩にひとこと

高校生・大学生は是非「自分なりのアンテナ」を一本立てることを勧めたい。自分に入ってくる音と、他人の雑音とは違う。今は空気を読むことを要求される時代である。そんな中、孤立しないことも大切だ。やりたいことは傲慢にやったほうがいい。自分独自の敏感なアンテナから入る自分の心に響く情報を大切にすること。そして日々努力し、自分の心に問い直すことも忘れないで欲しい。

猿橋賞とは

猿橋賞受賞

自然科学の分野で顕著な研究業績を収めた50歳未満の女性科学者に、1980年より毎年「女性科学者に明るい未来をの会」から1名に贈られる賞である。この会を設立した猿橋勝子博士は、女性で初めて日本学術会議会員に選ばれた地球科学者である。
石原安野准教授の受賞理由は「ニュートリノ天文学における顕著な研究業績を評価」。
石原准教授は2012年に、宇宙から飛来する高エネルギーをもつ素粒子ニュートリノを世界で初めて検出に成功した。宇宙の謎を解くこのニュートリノはあらゆる物質をすり抜ける性質を持っている。石原准教授は独自の視点で装置を改良し、検出できるまでにこぎつけた。このニュートリノは、ノーベル賞を受賞した小柴昌俊・東京大学特別栄誉教授が1987年に岐阜県のカミオカンデで観測したニュートリノの約1,000万倍の高エネルギーを持つと言われている。


いしはら・あや
1998 年 東京理科大学理学部第二部物理学科卒
2004 年 テキサス大学大学院博士課程修了
2005 年 国際共同研究「IceCube」に参加
2010 年 超高エネルギーニュートリノ物理ワーキンググループリーダ
2016 年 千葉大学准教授

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