海の上で大気中の微粒子を測る~船の上の研究生活

私の研究対象は大気中に浮遊する微粒子(エアロゾル)です。エアロゾルの発生源は様々で、自動車排ガスや産業活動など人為的な発生源と、火山・森林・海洋など自然の発生源があります。数年前まで、人口が密集する東アジアは人為起源エアロゾルのホットスポットでした。最近は排ガス対策などが進んで東アジアのエアロゾル濃度は減少傾向にあるといわれています。一方で、人口増加の著しい南アジアでは、人為起源エアロゾルによる大気汚染が深刻化しています。

エアロゾルに関して、一般社会では健康への悪影響の面が取り上げられがちですが、地球表層の物質循環という観点からは、エアロゾルの異なる面が見えてきます。人為起源のエアロゾルの中には、海の植物プランクトンの栄養となる窒素化合物が豊富に含まれています。例えば、南アジアの汚れた大気はモンスーンに乗ってインド洋上まで運ばれ、その大気に含まれるエアロゾルはやがて雨で洗い流され海の表面に沈着します。海の植物プランクトンは大気から運び込まれた栄養成分を使って増殖するかもしれません。海の植物プランクトンは、水産資源や地球規模の炭素循環を底辺で支える重要な役割を担っているため、プランクトンの増殖に欠かせない栄養成分が大気から海の表面にどれほど供給されるかを知ることは重要です。

学術研究船「白鳳丸」

2018年秋に幸運にも東部インド洋の研究航海に参画し洋上で大気エアロゾルを観測する機会がありました。11月6日にプーケット(タイ)から学術研究船白鳳丸に乗り込み、東経88度線を北緯15度(ベンガル湾)から南緯20度までを縦断観測した後、12月3日にジャカルタ(インドネシア)で下船し帰国しました。ベンガル湾の大気の汚れは想像以上で、大陸から1000km以上も離れているのに作業艇から1km先の母船が霞んで見えるほどでした。赤道を超えて南下すると風向きが変わり、非常に清浄な大気を観測することができました。

船の上は、第一線で活躍する研究者から学部学生までが生活を共にし、船員の方々の多大なサポートの下で観測に集中できる贅沢な場所です。この贅沢な場所に飛び込むきっかけは、物理学科の卒業論文研究でした。当時の指導教員だった三浦和彦先生が洋上で採取したエアロゾルの分析を行ったことで、研究船への憧れが強くなり、研究船の乗船機会に恵まれた進学先を選びました。2014年度から3年弱は助教として三浦先生の研究室に再びお世話になり、三浦先生が学務でお忙しそうなのを横目に2度も長期の研究航海に参画させていただきました。2017年2月からは現職の広島大学に異動しましたが、嬉しいことに広島大学にも豊潮丸という立派な研究船があります。今後は豊潮丸を使ってユニークな研究航海を企画し成果を挙げられればと思っています。


岩本先生のこと
三浦 和彦 (理学部教授)

東大で学位を取得してから名大、金大、理大で研究員・助教を勤め、全て論文化。複数の学会の役員もこなし、研究者・学生からの人望も厚い。出身地広島に移り、今後の研究者・教育者としての活躍が楽しみです。

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