薬学部は「医薬分子をとおして人類の健康を守る」

1.新規製剤の開発(使用するのに最適な形に整える)

製剤とは、患者に適した新規剤型(液体、クリーム、錠剤、ゲル等)への変更を臨床での必要性に対応して、薬剤を調製する業務であり、薬剤師の知識・技能を生かした貴重な職能と言えます。物性試験、安定性試験などから製剤処方を決定し、動物実験により体内薬物動態や効果および安全性を確認した上で臨床試験に進みます。

2.薬物相互作用の解明と回避方法の確立

超高齢化社会を迎え、一人の患者が複数の疾患を罹患して複数の薬剤を用いることが多くなっています。それに伴い製薬会社が医薬品開発で想定する以外の薬剤やサプリメント、食品との組み合わせでの相互作用により、効果の減弱、副作用発現などの危険性は増しています。そこで、臨床で問題となりうる組み合わせについて、血液を使ったin vitro実験や動物でのin vivo実験、および 臨床試験により相互作用の有無や強度について検討し、相互作用を回避する用法・用量、服用時期を提案します。

a)アスピリンの抗血小板作用に対する併用薬の影響

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用するとアスピリンの結合を阻害して抗血小板作用を減弱することが予想されます。そこで、各種NSAIDsによる影響についてヒト多血小板血漿を用いた併用添加実験、ラットへの経口投与実験により検討した結果、多くの場合にアスピリンを先に投与すれば相互作用を回避できることがわかりました。

b)肺MAC(Maycobacterium avium complex)症治療薬における薬物相互作用

非結核性抗酸菌症の約80%を占める肺MAC症は、クラリスロマイシンを主薬として、耐性菌発現予防のためにリファンピシンとエタンブトールとの長期多剤併用療法が推奨されていますが、有効率は6~8割であり治療に難渋しています。そこで、医療機関と共同で、肺MAC症患者の血中MAC濃度を約2年間に渡りモニターした結果、治療開始後2週目から継続して初回投与時の半分以下の濃度であり、長期的な濃度低下が治療成績不良の原因の一つである可能性を示しました。

3.薬剤の適正使用に関する研究

輸液ラインやフィルターなどの医療器具に吸着して必要量が投与されずに期待された効果が得られないことがあります。小児や新生児においては投与量が少ないため吸着の影響が大きくなることが予想されますが、有用なデータは存在せず、臨床では経験的な投与量設定が行われています。NICUの医師からの依頼でインスリンの吸着について検討した結果、患者にインスリンがほとんど投与されてないことが明らかとなり、提案した吸着回避方法を実施したところ良好な血糖コントロールが達成できました。

4.研究室現況

現在のスタッフは26名で、内訳は、教授1名、助教1名、大学院生5名、学部生19名であり、卒業後の進路は、医療機関と製薬会社が大半を占めています。薬物治療は医療における最も有用な手段の1つであり、薬剤師はその有効性を最大限に引き出し、かつ安全性を確保するために、チーム医療スタッフの一員として、薬物治療における薬学的問題点を薬剤師の視点から抽出・解析し、解決方法を構築することは大切であり、その考え方と能力はどの職業に就いても生きてくると思います。

研究室ゼミ旅行(大阪城にて)


[卒業生コメント]
 宮下 歩 (虎の門病院薬剤部薬剤師(薬・薬科2018)

青山研究室ではアスピリンの抗血小板作用に対する併用薬の影響についての研究を行いました。複数の薬剤を検討するために計画を立てたり、実務実習先で薬剤師に研究内容に関して臨床現場での印象を伺ったりと実臨床を意識しながら研究を進めていました。テーマを見つけ、論文をもとに実験結果を考察する思考力は、現在の病院薬剤師の業務に生かされていると感じています。

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