計算機シミュレーション・モデリングによる 分子レベルからの生命・材料システムの理解を目指して

安藤研究室:計算生物物理

私たちは設立4年目の若い研究室です。生物系の学科出身ですが、電気・電子系の学科で研究・教育活動を行っているという、少々異色の経歴です。私たちの研究室では、生命や材料の世界で起きている複雑で不思議な現象を、計算機シミュレーション・モデリングの技術を用いて、原子・分子のレベルから物理・化学の言葉で理解することを目指しています。

研究例
1. RNA分子のL-アミノ酸選択メカニズムの解明
生物の主要な構成成分であるタンパク質は、アミノ酸が鎖状につながった分子です。宇宙には、L型とD型という鏡像関係構造をもつアミノ酸がほぼ同量で存在しているにもかかわらず、現在の生物は、L-アミノ酸のみを利用してタンパク質を合成しています。なぜ生物はL-アミノ酸を好んで利用するようになったのか?これは、アミノ酸ホモキラリティーの起源問題と呼ばれ、生命進化の大きな謎のひとつです。2004年、原始の地球に存在したとされるRNA分子にL-アミノ酸が優先的に結合される現象が実験により発見されました。しかし、その理由は長く未解明のままでした。2018年、私たちは、分子の動きを原子のレベルでシミュレーションすることができる分子動力学法を用いることで、RNA分子のL-アミノ酸選択性は、簡単な物理化学の言葉で説明できることを明らかにしました。

シミュレーションで明らかとなったRNA分子のL-アミノ酸選択メカニズムの模式図。黒の矢印は原子間にかかる力、緑の矢印は化学反応を模式的に表している。

2.ナノインプリントリソグラフィの分子シミュレーションによる解析
現在、さまざま樹脂をナノレベルで加工する微細加工技術は、半導体デバイスの開発現場において、欠くことのできないものとなっています。ナノインプリントリソグラフィ(以下、ナノインプリントと略)は、ナノスケールのスタンプを使った押印技術です。この技術は従来の手法に比べ安価に微細加工が可能であるため、半導体の製造コストの低減に大きく貢献する事が期待されています。ナノインプリントを産業界に普及させるためには、欠陥の低減と生産性の向上という2つの課題を克服する必要があります。私たちは、分子動力学シミュレーションを用いて、ナノインプリントのパターン転写過程を解析しています。原子・分子のレベルでシミュレーションを行う分子動力学法であれば、樹脂を1つの連続体として扱う従来の計算法では見つけることのできなかった上記課題の解決策を見つけ出すことができるものと期待しています。

ナノインプリント押印過程の分子動力学シミュレーション

研究室現況

現在のメンバーは13名で、内訳は、講師1名、大学院生5名、学部生7名です。卒業後の進路は電気機械・器具、情報産業の会社への就職が大半を占めています。


[卒業生コメント]
山田 善大 株式会社ナビタイムジャパン(基礎工・電応2018修)

研究室では分子シミュレーションを用いて、これまで触れたことのなかった生物分野の未解決問題の解明に取り組みました。「分子レベルの解釈が可能」という強みを生かし他分野の問題を解決出来ることに面白さを感じると共に、これからは分野を超えて弱点を補い合う所に可能性があると思いました。また、将来必要と推奨され学んだプログラミングは、今の仕事でも生かされており感謝しています。

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